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2007年2月13日火曜日

幻聴のはじまり

あの頃、蔵書の少ない図書室に太宰治が無くて良かった。
太宰治を読んだのは、成人してからの20代前半だった。

「人間失格」

なんて言葉に高校時代に触れていたら、私は性急に肉体の「死」を選択したかもしれない。

「なんちゃって読書家」の私が、高校一年の読書感想文で入賞した『アンネの日記』は、実は中学三年の時に既読のものだった。
高校二年の読書感想文の『わが闘争』に至っては、『アンネの日記』を読んだ経験を踏まえて、読みもせずに「大体こんな内容だろう」と、あてずっぽの感想文だった。
…今思えば、それで入賞できる私も大したものかもしれん。

ところで、私が「病んだ」のは、高校一年の夏休みからだった。
当時、漫画家志望だった私は、長い休みを利用して、初めて雑誌に投稿を試みようと、何日も徹夜で作品を描いていた。

その漫画の内容。…
第二次大戦下のドイツ、主人公はユダヤ人の青年。
列車に乗って逃亡しようとする青年が、ゲシュタポに捕まり、連行されようという直前に列車から投身する。…
いわゆる「夢オチ」で、青年が死の瞬間に見た夢が、漫画の「肉」の部分だった。

あと一枚で仕上がるというところだった。
結局、この作品は投稿できなかった。

そうこうして、夏休みが終わる一週間ほど前に、手が勝手に文字を書いていた。
「自動筆記」というやつだ。
突然そんなことができるようになって、面白がった私は、私ではない“霊”と筆談で交信していた。
そうして、筆談から、やがて直に“霊”の声が聴こえるようになった。

祖父の声、強制連行された朝鮮人の声、アンネ・フランクの声、神の声まで聴こえる…。