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2007年4月19日木曜日

げきろんの“やまった”

イプセン、イエイツ、ベケット…。

アイソキュロス、ソフォクレス、エウリピデス…。
オセロ、マクベス、ハムレット、あと一つ…。

呪文のように空で覚えている、これらのことについて学ぶ、演劇論という授業があった。
この授業の講師の“やまった”は、私が生まれて初めて遭遇する「東大卒」の人間であった。
東大の哲学科で「美学」を専攻したのだそうな。

美学。そんなマンガみたいな学問が、本当に世の中にあったとは。

当時30代の“やまった”はガリ勉メガネの、キモ系の講師だった。
随所で自分のインテリぶりを披露してしまう、喩えるなら、うっかり「ピザ」のことを「ピッツァ」と言ってしまうような、キモい先生だった。

このキモさは、慣れてくるとやがて快感になってくる。
「キモさを、もっと…!」と望むほどに。

“やまった”はガリ版のプリントに、イタリア古典喜劇「コメディア・デラルテ」の表記の、「ラ」は「ルア」で、わざわざ手書きの小さい「ル」を書き込んで、この「ル」は巻き舌であると、何度も巻き舌で「デ(ル)アルテ、デ(ル)アルテ…」と言っていた。

演劇論は私の通知簿の「最後の砦」だった。
私は、このキモい“やまった”が、結構お気に入りだった。
不登校の私も“やまった”のお陰で、通知簿に10段階の9か10が必ず一つあった。

多分、“やまった”は頭が良すぎて、成績のつけ方とかがよくわからなかったのだと思う。